HOME 我が家 ドイツ 思った 旅行 写真 その他

 

 

義母の住むケムニッツから車で約2時間。わたしたちは隣国チェコの首都プラハへとむかっていた。

チェコ国内は冷戦後にようやく高速道路網の整備を始めたばかりで、ドイツからは一般道を通って行かなければならない。

国境でパスポートを提示し、簡単な出入国審査を終えると、そこはわたしにとっての初めての東欧圏。道路標識もチェコ語でかかれてあり、SやZの上にv印がついた文字が目立つ。

しばらく行くと簡素な小屋が10件ほど立ち並んだ土地がいきなり農地の間に現れる。それぞれの小屋の前にはチェコのお土産物やコーラなどの飲料水のペットボトルのパックなどが所狭しと並べられている。そんな「マーケット」が国道沿いに点在している。

チェコの物価はドイツと比較するとかなり安いので、ドイツ人が国境を越えて日用品などを買いにやってくるのだ。このような小屋はどうやらベトナム人が運営しているようで、アジア的な印象を与える。

田舎なのにガソリンスタンドが多いのも、安価なガソリンを給油しにくるドイツ人客目当てだ。

典型的なドイツ人のチェコ・パック:日用品を買い込んで、ガソリン入れて、ついでに安いレストランで食事。そして最後にお楽しみが待っている。

それは割安な「春」を買いにくることでした。

わたしたちがこの国道を走っていたのはちょうどお昼どき。それでも道の横に「春」を売る女性が一定の距離をあけて1人、2人と立っている。薄ら寒いのに肌をかなり露出する服装で。通りかかる車にむけて手招きをしたり腰を振ったり。ひと目でそれとわかるので利用する際には便利かもしれない。

10代後半から20代前半と思われる若い女の子たちがほとんどだ。少し離れたところに止めてある車の中にサングラスをした男がバックミラー越しに女の子たちの様子を監視していた。

美しい古都、プラハを満喫したあと、わたしたちは家路についた。今回はドレスデンへ通じる国道を北西へ進路をとり、ベルリンの我が家へむかう。

大型トラックの国境越えができないケムニッツからの国道と違い、ドレスデンへむかう道はいわばドイツとチェコを結ぶメインルート。それだけに「春」の品揃えも豊富だ。

道沿いには「売春宿」が立ち並び、ショウウィンドウには下着姿の女の子が官能的なまなざしをドライバーに振りまいている。あちらの窓では黒いミニスカートをはいた女性が腰を振っている。道端には2-3人ほどが一緒に立って、通り過ぎる車に向かって色気をふりまく。

売春宿といっても、かつては普通のお店だった店構えをしている。冷戦終了後、経済格差が産んだ新たなビジネスが静かな山奥の村をこのような場末にしてしまった。ここで春を売る女性たちは、おそらくマフィアなどに連れてこられた人たちで地元の人ではない。すっかり「安い風俗産業の町」におとしめられてしまったところに誰が好んで住むだろうか。一軒、また一軒と住み慣れた土地を離れていき、何も飾られていないショウウィンドウが残る。そしていつしかピンク色の看板が飾られる。

プラハは本当に魅力的な街だった。旧市街全体が美術館のようで、美しい。ツーリストとして心地よい程度に観光化されている。また食事がとても美味しい。ビールも安く飲めるし、酒飲みのひとにはお勧めだ。

観光地では英語が殆ど通じるし、洗練されたサービスを期待できる。もちろん、車や貴重品などの盗難はとても多いらしいが、それは各自が気をつけていれば防ぐことができる。

たった1泊だったので、時間が少なくて残念だった。また、そのうちに必ず訪れたい街だ。

正直なところ、国境近くの様子はとても不快だった。好奇心を刺激されるのも最初のうちだけで、その退廃的で犯罪の臭いのするこの国道は、できることなら二度と御免蒙りたい。

現在建築中のドレスデンとプラハを結ぶ高速道路が完成する日を待ち望む。それでも国境を越えて「春」とガソリンを買いに行くドイツ人は減らないだろうけれど。

2002年7月26日

 

HOME