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第三章 接客サービス 

 

ドイツに住んでみて、一番のカルチャーショックは食べ物よりも言葉よりも、お店の人々の態度でしょう。愛想がない、気が利かない、サービス精神などかけらもない。ないないないのないづくし。あるのは「売ってやるから有難がれ!」の態度です。

 


まずは、スーパーでお買い物をいたしましょう。

 

こちらのレジではワゴンやかごの中の品物をベルトコンベアの上に自分で並べなければいけません。日本のようにかごを二つ並べておいて、清算した商品から空のかごの中に移し変えるという合理的な考えはありません。しかも移し変えられた商品は整然とかごの中に並べられ、お豆腐や卵などは別にして最後に入れてくれる、というような尊敬すべき日本のレジ係の気遣いなど期待するなどもってのほか。機械的にスキャナーに通された商品はレジ前方のスペースへ無造作に放り投げられていきます。

 

その放り投げられた商品をまた自分の買い物袋やケースに狂ったような速さで収納していかねばなりません。その理由はあなたの後ろに並んでいる長蛇の列からの無言のプレッシャー。レジは10箇所ほどあるのに、レジ係りが座っているのは2箇所だけ。客の少ない時間帯ならともかく、これだけ長い列が出来ていても他のレジを開けよう、という機転が利かないのです。

 

さぁ、ぐずぐずしてる間はありません。お支払いですよ。現金にしましょう。財布にたくさん小銭があるので半端な部分まで払いましょう。あなたが財布の中の5セント硬貨を探している間、レジ係は仏像のごとく、片方の手の平を広げて、明後日の方向を見つめています。人にも拠るかもしれませんが、わたしはこんな風に手を突き出されると「はよ金払えよ。」と言われているようで不快に感じます。

 

きっちりの小銭がなくても大丈夫ですよ。お釣りはちゃんと貰えます。少なくとも金額だけは正しいです。小銭をお金の受け渡し皿に乱暴に投げ込まれることもありますがね。

 

仕事中に同僚どうしで堂々とお喋りをするのにもうんざりさせられます。私語を慎む、という言葉は業務マニュアルにはないようです。同僚と楽しそうにお喋りをしているところへ客がくると、とたんに不機嫌な顔になり、その態度で接客されるのは感じ悪いですよね。

 

ドイツの販売員全体に言えることですが、別に態度が悪くなくても、顔が悪いのです。いや、造りのことではなくて表情が。笑わない。それどころか怒っているかのよう。怖いですよ。

 

さあ、気を取り直してデパートへお洋服でも買いに行きましょう。

 

ベルリンにはKaDeWe(カーデーヴェ)という高級デパートがあり、一流ブランドが並んでいます。でも、その商品の並べられている様子はダイエーか?という感じ。衣類も台の上に山と積み上げられており、その山の中から自分のサイズを探し出さなければいけません。あら、わたしのサイズがないわ。店員さんに聞いてみましょう。「xxサイズはありますか?」「ナイン!」。これで会話はおしまいです。「申し訳ございませんが・・・」とか「あいにく・・・」とか「よく似たものでこちらなら・・」などという言葉はついぞ耳にしません。(定期的に商品が追加入荷される日本と違い、ドイツではシーズンの初めに入荷するだけなので、良いものが欲しければ早めに買わなければいけない・・・というのは流通システムの違いなのでここでのテーマからは外します。)

 

仕方なく、靴売り場へとむかいます。フェラガモやバリーなどのブランドは売り場の一角を自社ブランド用に確保していて、さすがにそこはお洒落で高級感が漂っています。でも他の一角に目をむけると、箱が山積み。何の箱って?靴の箱ですよ。靴を買ったら入れてくれるあの箱。一番上の箱の上には靴が置かれてあり、つまりこの下の箱には全部このデザインの靴が入っていて、自分のサイズを見つけなさい、というわけです。安売りの靴屋ならともかく、ここはKaDeWe。箱の横の表示を見て自分のサイズを見つけたとしても、それが一番下だったらどうなりますか?自分の背丈ほども高く積み上げられた箱をひとつひとつ下ろして一番下までたどりつくか、一か八かで何個もの箱を一気に抱えてどけるか。そうして苦労の末、自分のサイズを掘り出しても、試着してみて気に入らないと、もう一度さっきと逆のプロセスを踏んで元に戻さなければなりません。(気に入って買うとしても他の箱を戻さないといけないのは同じですが。)・・・これって客のすることか??

 

靴もあきらめ、館内をフラフラと歩いていると後ろから「Vorsicht!(注意)」の叫び声。店員が荷台に商品を積んで移動させていて、買い物客の間を縫って歩いているのです。後ろから来ておいて、前に歩いている客にむかって「注意=気をつけろ=道を開けろ=邪魔だ」と言うのも日本人の感覚としては納得いかないですよね。もっともこのあたり、言語の特性が色濃く出ているので、単純に解釈して勝手に腹を立てるのも馬鹿げているかもしれません。

 

それにしても、よくこの「Vorsicht!」を耳にします。つまり、開店時間内、客が買い物をしている最中に商品の搬送や並べ替え、ディスプレーの変更などをしていることがとても多いのです。閉店時間が近づくと、もうその日の販売なんてどうでもよくなり、終業時間とともに家路につくべく、客が商品を見ているにも関わらず片付けにかかります

 

KaDeWeの地上階は化粧品売り場。閉店時間が迫っていますが、マスカラをを買わないといけません。マスカラといえば、なんと言ってもランコムよね。定評のあるここのマスカラは種類も豊富。最近新製品も出たらしいので使ってみようかしら。などと考えながら売り場へ来てみると、棚卸ですか??というような大規模な商品のチェック作業中。おいおい、まだ営業時間中ですよ。販売員の若い男性はあなたの姿を見ているけれどまったく無視。ひやかしじゃなくって、マスカラ買いに来てるんだから、接客してよぉ。じっとマスカラの棚の前で立っているあなた。ちょくちょく販売員の彼の方に顔をむけて、その意思を示しながらも、7-8分近くたちました。そして、気が付いた。そうだ。ここはドイツ!日本のように以心伝心では通じない。言葉であらわさなくてはいけない。そして、ちょっと皮肉っぽく「マスカラを買うことができますか?」と彼に言葉を掛けました。面倒臭そうに顔を上げた彼、「で、どのマスカラが欲しいの?」。どのマスカラを買えばいいのか教えてくれるのが販売員の仕事でしょ。本当は新製品を試してみたかったあなたも、今使っているいつものヤツをさっさと買ってその場を足早に去ることになります。

 

 

そうそう、支払いのあとで、客が「ダンケ」と言い、販売員が「ビッテ」と言っている場面の方が断然多いですね。

 

ドイツでのお買い物の鉄則

  1. 販売員の気遣いを期待するな。

  2. 販売員が何かしていたら、邪魔をするな。

  3. 販売員に感謝の言葉を忘れるな。

もちろん、その他にとても親切な販売員もいます。そういう親切な人に巡り合ったときは、その日一日がなんとなく爽快に過ごせます。

 

こんな日常を送っていて、たまに日本に帰ると販売員の態度にびっくりさせられます。実家の近所のイズミヤに開店直後に行ったときのこと。出会う販売員さん全てが、その仕事の手を止め、あるいは歩いている人は立ち止まり、深々と頭を下げて「おはようございます。いらっしゃいませ」と挨拶してくれたのです。これには「およよぉ!!」と言う感じで面食らってしまいました。ちょっと過剰なんだろうけれど、「お客様は神様です。」という言葉を思い出し、はっきり言って悪い気はしませんでした。

 

でもこの日本的な接客の美徳が失われつつあるということをここ数年感じます。航空会社の地上職員の質の低下。笑顔がない、気が遣えない、言葉遣いを知らない・・まるでドイツ人のようだとわたしは感じました。これも航空業界の苦しい台所事情で派遣社員を使っているからかしらなどと邪推しているわたしです。

 

あら、最後はなんだかおばさんの愚痴みたいになってしまいました。

 

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