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2002年1月24日〜2月10日

 

ホテルのロビーにて。国家元首の会談?

 

第6章 旅の終わりに・・・

@ジョホバル

シンガポールとの国境近くに位置する都市ジョホバルがわたしたちのマレーシア最後の宿泊地だ。牛や猿が暮らすのどかなランカウィから、国境の街独特の混沌の中にいきなり身をおくことになる。人と車が交錯する街を歩いてみる。両替商がやたらと目につく。シンガポールから物価の安いマレーシアへ買い物に来る人も多いと言う。

そんな街角に「ロティ・チャナイ」のお店があった。ロティ・チャナイは「インド人がマレーシアにもたらした最高の文化」とさえ言われる、インド風パンケーキである。小麦粉・水・コンデンスミルク・砂糖、そして「ギィ」という水牛の乳から作られたバターをこね合わせた生地を薄くのばし、それを折りたたんだものを鉄板で焼く。カレーと一緒に食べるのだが、どこかのホテルの朝食でこれに巡り合って以来、わたしはすっかりこのロティ・チャナイのファンになってしまった。ホテルの朝食ブッフェではコックが鉄板で焼いてくれるのだが、焼きたてのロティ・チャナイは格別美味。

ジョホバルの街角で思わず出会ったこのロティ・チャナイのお店に迷わずわたしたちは入ることにした。が、注文の仕方がわからない。歩道に向かって作られた鉄板でロティ・チャナイを焼いているおじさんに直接注文しようとしたが、中で注文しろという素振り。簡単な机に丸椅子が並んである、大衆食堂のような店内に空いている席をみつけ、座ると、若い男性が注文をとりにきた。身振り手振りでどうにかロティ・チャナイとアイスティを注文するが、ちゃんと伝わったのか不安。しかし、5分もたたないうちに目の前には注文したとおりのものが置かれていた。焼きたてのロティ・チャナイとプラスチックの器に入った(かなり)辛いカレー。カレーといよりもカレーソースという感じ。少しちぎってソースをからめて食べる。美味しい。あっというまに食べ終えてしまったので追加注文までする。リサはソース無しで食べている。水牛のバター、ギィがコクの深い味と香りを添えている。焼くときもこのバターを溶かしたものを鉄板に塗るのだ。

このお店のほとんどの客は男性で、アイスティやジュースを飲みながら話し込んだり、ちょっとした軽食で腹ごしらえをしたりしている。ひとりでふらりと入ってきて飲み物を頼んで新聞を読みふけっているひともいる。店先では、さきほどのおじさんが休む間もなくロティ・チャナイを焼きつづけている。周りの風景に溶け込んでいないわたしたちは、ちょっと異分子的な存在だが、とくに好奇の目をむけられるでわけでもない。アイスティの甘さが心地よい。

少し大きなショッピングセンターに入ってみる。衣類などは、安いけれどやや垢抜けない感じがする。インド系の人が着るサリーの生地を売るコーナーはいろいろな色や柄、また生地の種類があった。下に着るTシャツと肩から掛ける布、腰のあたりに巻く布の色の組み合わせを楽しめ、またそこにセンスが冴えるという感じで、着物における帯や帯締め、半襟のコーディネートに通じるものがある。リサはここで手の甲に土で絵を描く、インドの伝統的ハンド・ペンティングをしてもらった。緑の土をセロハンの細い穴から絞り出しながら細かい模様が描かれていく。この土は数時間で乾いて、剥がれ落ちるのだが、その下の肌はオレンジ色に染まり、描かれた模様が数日残る。自然の刺青みたいなものだ。

ショッピングセンターにはスーパーマーケットもあり、そこでわたしは「ギィ」とカレーのもとを買い込んだ。クノールは日本にもドイツにもあるが、マレーシアにもあった。ただ、クノール・ポタージュスープではなく、クノール・チキンカレーのもとだ。そして、リサの大好きな豆乳も買った。紙パック入りの甘い豆乳はこの旅行ので、彼女のお気に入りとなったのだ。

夕食は海岸近くに立ち並ぶ屋外レストランのひとつに入った。どのレストランも新鮮なシーフードを店先に並べ、好みに応じて料理してくれる。しかし、今までと違って、ここはあくまでも地元住民対象のレストラン。英語が全く通じない。アイスティでさえも通じないのには参ってしまった。今まで、言葉に殆ど苦労することなく食事を注文してきたわたしたちはかなり当惑した。店先に並んでいる魚や貝を指差して、なんとか注文はしたものの、どこかわたしの胸中は穏やかでなかった。

今までマレーシアの文化を体験してきたようなつもりになっていたけれど、結局は観光用に用意されたものを表面だけ触ってきただけだったのではないか。地元の人がいくカフェに入って、彼らの生活を垣間見た気分だったけれど、それは単なる思い上がりに過ぎなかった。観光地でもないこの街のレストランではわたしたちはなんて愚かしい姿をさらけ出しているのだろう。

テーブルの上に置かれている籠の中に、笹でくるんだものがたくさんおいてある。隣のテーブルの家族がこれを勝手に取って食べているので、わたしもひとつとって、笹をむいてみる。中には赤い魚のすり身を蒸したものがくるまれてあった。食べてみると、蒲鉾のようでおいしいが、辛い。赤いのは唐辛子だ。隣では小さい子供もおいしそうにこの辛口蒲鉾を食べている。味覚は幼い頃から身につけていくのだなぁ・・。

植民地時代の面影が残るジョホバルの街

つづく

これまでのお話

 

 

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