HOME 我が家 ドイツ 思った 旅行 写真 その他

前編中編後編

8月20日(火) 

移動 ベルリン⇒Lenggries 

 

ベルリンからアウトバーンを走ること6時間。途中、水位の増したエルベ川を横切る。夕闇が迫る前にアルプスの麓に到着。

8月21日(水) 

 LenggriesからゴンドラでBrauneck(1540mまで) に登る。

徒歩でLatschenkopf(1712m)など尾根づたいに歩き山小屋(1550)に泊まる

昨日までの良いお天気と打って変わり、今日は朝から灰色の雲が低く垂れ込めるあいにくの空模様。それでもゴンドラで登る。急斜面で草を食む牛たちの姿が霧で見え隠れする様子がゴンドラから眺められる。

ゴンドラに乗ってます。

ゴンドラを降りて歩き出す。カウベル(牛の首にぶら下がっている鈴)の清涼な音色が山頂に響く。牛と記念撮影をしていると雨が降ってきた。

比較的平坦な、でも長い山道を歩いていくうちに雨足も強くなる。途中でお母さんとリサぐらいの女の子の二人連れを追い越す。その他は殆ど人影がない。道の脇の小高い草地から牛が雨のせいで柔らかくなった土手を滑り落ちてくる。牛の下敷きになったら大変。急いで通り抜ける。ヤッケのフードから雨の雫を垂らしながら、今晩の宿泊地である山小屋にたどり着く。

迫り来る牛。滑り落ちてくる牛にも注意。

ひと気のない山小屋でわたしたちをむかえたのは2匹の犬。最初はこの雨の中訪れたわたしたちを警戒したのか、盛んに吠えていたが、そのうちおとなしく座り込む。小屋のドアをあけると、中には数組の登山者がテーブルで食事をしたりお茶を飲んだりしている。わたしは新鮮な牛乳を飲んで少し元気が戻った。

この山小屋に泊まりました。後ろの斜面に牛や山羊が放牧されている。

しばらくすると先ほどの親子が入ってきた。15分ほど休憩したあと、また雨具をつけて先へ行くようだ。「まだ上へいくんですか?」と尋ねると、「トゥッテインガー小屋まで行きます。まだまだ先は長いのよ。」とのこと。あとで地図で調べてみると、いままで歩いてきた距離の3倍はある。この雨の中大丈夫かしら?

小屋の2階部分が宿泊用の部屋となっており、「雑魚寝」部屋もあるがわたしたちは「個室」にした。小さなベッドが二つあるだけの天井が斜めになっている小さな部屋。それでも窓からは向かいの山々が眺められる。雨が少し小降りになったので小屋から更に続く道を歩いてみることにする。

山小屋のすぐ後ろは急斜面で一本の道がついている。この道はガレ道でかなり歩きにくい。その横では馬が二頭、草を食んでいる。少し離れたところには牛の群れ、そしてかなり上の方には山羊の群れがやはり雨の中、草を食んでいる。この山小屋は農家でたくさんの家畜を飼っている。この他に豚もいた。

馬となごむ。後ろの小さい家はチャペル。マリア像がありました。

ガレ道を登りきると岩の間を狭い道がつづく。岩肌に可憐な高山植物が咲いている。エゾ松というのだろうか、低く地面を這うような松も多くなってきた。なんとかひとつの山の山頂までたどりつく。そこは分岐点になっており、道しるべがいくつか立っている。「トゥッテインガー小屋」の方角を指す道しるべを見ながら、さっきの親子のことをまた気にかける。

こんな道を登っていきました。

そこで簡単なピクニックをしていると、雲の間から日が差してきた。下方の谷間には白い霧が立ち込めている。遠くの高い山々は日に照らされてその稜線を顕にしてきた。

道しるべのもとで食べたキュウリのピクルスは美味しかった。

 

さらにそこから尾根づたいに歩く。狭い道が山羊の糞のために更に狭くなって歩きにくい。かなり高いところまで山羊が登って来るものだと驚く。下方にわたしたちの小屋を眺めながら歩く。そして最後は道なき道を下らねばならない。雨で滑りやすい岩場をリサと一緒に降りていくときはかなり神経が磨り減った。下りきると、そこはゴンドラ駅から小屋へ来る途中に通った道。平坦な道が続くだけなのでとりあえず安堵感でいっぱい。

尾根づたいの道。どちらに転んでも下に落ちます。あるいは糞の上。

そのあと、また雨足が強まり、わたしたちが小屋に着いたときはヤッケの中に水が浸透する一歩手前だった。6時には夕食をとり、7時半には3人揃って寝ていた。山の生活だ。

おやすみなさい。ママはもう寝てる。(実はビールで酔っ払っている。)

 

8月24日(木) 

山小屋の周辺を軽く歩き、Brauneck山頂(1555)経由でゴンドラに乗って下山。 Lenggries泊

部屋の窓から見える朝の景色。

早朝、目を覚まして窓の外を見ると明けきれぬ空は既に澄み渡っている。下の谷間は厚い雲で覆われてその合間から低い山々の頂が顔をのぞかせている。遠くに連なる高い山々は朝日に照らされ、紫がかった薄いピンクに染まっている。ああ、山の朝だ。今日はいい天気。窓のすぐ下からカウベルの音がする。この山小屋の牛たちが草地へと向かっているのだ。「おはよう!ペーター!おはよう、ゆきちゃん!おじいさん!」と思わず叫びたくなる。

さわやかな山の朝。わたしたちは雲より上の天上界にいます。

朝食後、小屋の後ろの急な坂道を再び登ってみる。同じ道を行くのもおもしろくないので、少し道から逸れて歩いていく。草地の中には可憐な高山植物や石にまじって牛の糞がところどころ落ちている。小高い丘に登り、朝の光にくっきりと浮かび上がる山の姿を眺める。気持ちいい!

青空に映えます。

気がつけば、昨日は殆ど人影のなかったこのあたりにたくさんの登山客の姿が見える。中には普通の靴で歩いている人もいて、ここがかなり気軽に来ることのできる場所であったことに気がつく。昨日の雨の中では想像もつかなかったけれど。

お昼頃、再び小屋にもどる。朝食に出たチーズがおいしかったのでそれを買い、パンも数切れ分けてもらう。小屋のテラスはかなりの人出。食事をしたり飲み物をのんだりしている。昨日は外に座るなんて思いも依らなかったのに。

荷物を持ってゴンドラ駅のほうへ向かう。昨日、雨の中、親子を追い越したこの道。今日はたくさんの登山客でにぎわい、全く違う表情だ。

Brauneck山の頂上はほかと同じように十字架が立っているが、そこは他の子供連れに占領されていたので、少し離れたところにあるベンチでお昼ご飯にする。このあたりはパラグライダーの練習場所となっているようで、山の間の空を何台も飛んでいる。黒いカラスのような鳥が何羽も一緒になってパラグライダーよりも鋭く、風に乗って谷間を滑るように飛んでいった。

おべんと、おべんと、嬉しいな。リサはそうでもないのか?

長いゴンドラに乗って麓にもどると昨日は数台しかなかった駐車場もいっぱいで、なんだか夢からさめたような感じ。昨日の悪天候のお陰でわたしたちは少し孤独な、それでもどこか崇高な雰囲気を味わうことができたようだ。

中編へ

TOP OF THIS PAGE